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架空の庭 更新場所(確定地)
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    時空の果てに もしくは12の話 お題「冬」その3(完結)

    すっかりと間が開いてしまいました。
    つーかアップするのを
    忘れていたんですね・・・

    真夏に書いたものですが
    すっかりと
    ふさわしい季節になりました・・・ね、と
    言っていいのカシラ?



     そこから、礼二郎の奴の動きは迅速すぎた。時代錯誤な外套を着込んでさっさと部屋を後にする。呆気に取られていた俺も慌てて後に続けば、和寅の奴はこの状況に驚きもせず、先生こいつもお忘れなくと、すぽりとマフラーを礼二郎の首にかけ、お早いお帰りをーと、気楽な声で俺たちをあっさりと送り出す。
    ——— 止めなくっていいのかよ?
     こいつ、病み上がりだろうが……と思いながら、先を跳ねるように行く礼二郎を俺は追いかける。まぁ、足取りは確かだから大丈夫なんだろう。もしかしたら、道端でヘたり込んじまうかも知れねぇが……そん時はそん時で、俺がなんとかするしかないだろう。だから、和寅の奴も気楽に礼二郎を送り出したに違いない。
    ——— まぁ、いいか……
     便利に使われている感はある。が、俺が少しばかりの辛抱をすれば、いろいろ丸く収まってくれるというのなら、辛抱のしがいもあるというものだ———多分。

     ビルヂングの階段を下りきって、外に出る。午後の日差しはすっかり落ちて、今は夕暮れの黄昏時。ぽつぽつと街に明かりがつきはじめていた。
    「うぉっ!寒い、寒いぞっ!」
     当たり前の感想というか文句をたれながらも、礼二郎の奴はどこかうれしそうに風の中を飛び跳ねている。跳ねているうちに、首にかけられただけのマフラーが緩んで、礼二郎から離れて行く。
    「おい、礼二郎!」
     ひらひらと風にマフラーは舞う。そして地面へと落下してゆく、その寸前に俺はなんとか拾い上げた。
    「なあに、修ちゃん?」
    「なあに、じゃねえよ……ったく!」
     手間をかけさせるんじゃねぇよ、と言いながら俺は掴んだマフラーをそのままに礼二郎へと突き出せば。

    「うわっ!」
    「うぎゃ!」
     俺と礼二郎の口から、叫び声が同時に飛び出す。
    「なんて手ェしてやがる!」
    「そっちこそ!」

     ぶつかった手は、あまりにも冷たすぎた。そして、お互いがぶつけた手をかばうようにして、身構えてもいるんだが、実に間抜けた姿をさらしあっていた。しかし、俺が手袋をしてないのはいつもの事なんだが……
    「おい、手袋は?」
    「忘れた」
     あっさりと礼二郎は応じてくる———聞いた俺が馬鹿だった。大体、マフラーすら忘れているような奴に手袋の用意なんて出来るわけがない。むしろ、きちんと外套を着て外に出ている方が奇跡に近いかも知れない……って、本当に大丈夫なんだろうか?まさか、逗子で拾った風邪のせいでそうなってしまったんじゃないだろうな、おい?
    「どうした、修ちゃん」
     急に黙りこくって、と礼二郎が近づいて尋ねてくる。我にかえれば、俺は道の真ん中で突っ立って、右手でマフラーを掴み、左手は自分の眉間に置いていた。多分、数秒は意識を飛ばしていたんだろう。
    「どうもしねぇよ」
     ふん、と俺は鼻息荒く応じてやる。こいつが妙なのは元からだ。多少の風邪ごときで変動するほどヤワでもねえ。
    「へんなの」
     俺の目前にやってきた礼二郎は、首をすくめてあきれた顔をして俺を見ている。ぱちぱちと目を瞬かせ出す———その前に。
    「うわっ!」
     問答無用とばかりに、俺は手にしたマフラーをぐいっと礼二郎の首にくくりつけてやる。ぐえっと形よい口から似合わぬうめき声が出ても気にしない。(端から見たら、首を絞めているように見えたかも知れないが)

    「まったく、手間のかかる腐れ縁だ!」
    「馬鹿修、いったい何……を?」

     俺は礼二郎の声を無視して、その手を掴む。そして、強引に俺の外套のポケットに突っ込んだ。

    「……こうすりゃ片方だけでも、マシだろ?」
     そう言って、俺はポケットの中の礼二郎の手をきつく握ってやる。気のせいか、ひどく手は骨ばっていた。
    「うん……そうだな」
     そして、静かに答えながらも、ぎゅっと礼二郎も俺の手を力強く握り返してくる。
     
            ※※※

     そうして、冬の神田を俺たちは歩く。が……気がつけば、ポケットの中で指相撲していたのはご愛敬というか、想定内だ。

    「おい」
    「うん?」

     ごんと礼二郎が体当たりをしてきた。

    「もう僕を除け者にするんじゃないぞ?」
    「———あぁ、そんな事はしねぇよ」
     肩越しに軽く応じてやれば、礼二郎は首をすくめて笑っている。そして、俺もつられて笑った。

     冬の夕暮れ、冷たい風の中を行く。これを散歩というのは、多少の無理も感じるが、こんな時もあっていいだろう。そして、握り合った手の温もりが妙に気持ちを穏やかにしてゆく……

     だが、この時の俺は知らなかった。この礼二郎をはじめとする知り合いの連中どもが、またしても箱根の山奥で「事件」に巻き込まれ、ひと騒動を起こすことを。そして俺は、一人東京で、得体の知れない事件を新聞で知る羽目となり、なんとも言えない気分になる事を。

     そして、それが———まだまだ序の口だとは、もちろん知らない。

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